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旅日記-我ら青春の1ページ 伊豆半島一周   第1日  東京-伊東-遠笠山
 昭和35年3月11日 金曜日   天候 雨    
                               今日の行程の地図

 7時東京駅1 2番ホーム中央に集合予定。 例によって例のごとし、最終ランナー(*1)到着は発車数分前。 しかし予定通り7:34豊橋行き湘南電車で出発。 隣はトン女のパーテイー(*2)。 出発間もなく怪しかった空からついに液体が落ちてきた。 まるでわれわれの前途を嘆いている(?)かのごとし。 四人は一向に気にもせずおしゃべりをしている。
(*3) 
 10:15 伊東着。 ここでC2H5OH 含入のH2O を求める。 ただしこれは非常用薬品としてオアズケ(*4)
。 バスにゆられて霧に煙る郊外を約1時間。 八幡(ハツマ)で降りるとあいにくドシャブリで、仕方なくバスの「駅」で立食を始めたところ“駅長さん”が事務所に招いてくれお茶までサービスしてくれた(*5)。 0:30 相変わらず降る雨の中を出発。 途中からバスを利用することにして管引までは歩き始めたが、 悪路に悩む。 昼食のゴミの処置に困る。 この辺の人はどこに捨てるのかネ。 しばらくしてバスが来たが見送って、結局は管引までのバス代は節約。 管引から左へ入って次第に坂道になる。 途中で道をたずねると“ロッジまでかね。まだダヤーブーあるダナ2時間位かなあ”とのこと。 レインコートを着ているので汗びっしょり。 炭焼き小屋で荷を整え小川で水を飲んだりしながら行くと間もなく、台風の跡のまだ生々しい沢に入る。 道路も橋もメチャクチャで時にはどっちへ進むべきか分らなくなる事もある。 荒れた沢の隅に並ぶワサビ畑が対照的で印象に残る。 道も川もすっかり形を変えているので、我々が今どこにいるのか地図を見ても分からない。 指導標もトギレトギレで実に心細い。 道が二つに分かれるところでは、両方へ一人ずつ偵察に出て先をたしかめる始末である。 そんな沢を右に見送っていよいよ急な山道になる。 一気に登る方が良い事が分っているから、下を見つめて一歩一歩、一言もしゃべらず歩く。 天気さえ良ければ素晴らしい眺望が得られるだろうと思われるところをすぎると、平らな林となってバスの通りそうな広い道路に出る。 すでにあたりはうすぐらくなったが、正面にモダンな建物が見えた。 
  ドアを開けるとオバサンが出てきて“予約のお客さんですね。 水島さんのグループですか?”と言う。 よっぽどお客が少ないんだネ。 早速ケビンに案内してもらったが、そのスマートな名とは似ても似つかぬ掘立小屋。 デッキチェアのようなベッド?が並んでいる。 炊事場は他の建物ののき下で、雨もりがする。 でも野天でなくて幸いだった。  最初からパン食じゃヤリキレナイものネ。 食事の用意にかかったが、なかなか火がつかず、一同心配する。 マットの上でこの旅行最初の晩餐を開いたのは大分夜もふけていた。 水島の指揮で出来た飯はタチマチ四人の口の中に姿を消した。 おかずはワカメのミソ汁と缶詰。 第一日の雨の行程は相当なアルバイトを要したから、とにかくうまい。 自分の胃はもっと上品に出来ているはずだったのにと思うのは、自分だけでないと思う。(*6)

 今日第1日から雨に降られて明日からが思いやられるが、 四人とも元気にここまで来ることができた。 明日は20 km以上も山を歩くが、海抜900m の貯金があると気が楽だ。 今日は雨のため写真をとるだけの心の余裕がなかった。 残念。(*7)
 いまマットの上でろうそくの火に照らされて、四人はなにを考えているだろうか。 それぞれみんな違うことを考えているかもしれないが、(*8) ただ、だれでも感じているのは“とうとう来てしまった”という気持ちだろうと思う。 ケビンの中は部屋いっぱいにぬれた着物が干してある。 明日は晴天であれ。 そして皆元気であれ。(*9)         m.m.

<日記ページへの当時の落書き>
 *1 <服部>
 *2 <大原はよせよせ(せよせよ?)といったのに、水島と升谷がソバに行こうといったのです><ちがいます>
 *3 <食べているのではない。水島と升谷と服部<と大原>はソバでトン女の子がタベているのをみて、ハラヘッタ、ハラヘッタとさかんに言う。もう少しお上品にしろ。>
 *4 <ダレモヨダレヲダシタクセニ
 *5 <お茶だけはメッチェンのサービス>
 *6 <いや、自分だけだぞ。あんなに食べたのを忘れたのか。オレの分まで食べたことを!>
 *7  <職務に忠実であることは認める>
 *8 <オレはアノ人のコトダ><オレモダ>< スマン!そんなにみんなボクのことを思っていてくれてるとは知らなんだ>
 *9  <どうもありがとう。>
                               今日の行程の地図

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