魚影も見える青木湖の湖面 |
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大町宿から、海ノ口宿を経て飯田・飯森宿へ |
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大町宿を早朝に出発 |
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若一王子(にゃくいちおうじ)は、神仏習合の神である。
境内に立派な三重塔がある。観音堂に若一王子の本地仏とされた十一面観音
の像が安置され、神仏習合を色濃く残す。 |
鯖缶の文化! |
今回の旅の初日は柏矢まで歩き終えて電車で松本に戻った。さっそく地酒が飲める居酒屋さんをヤドで紹介してもらって出かけて、馬刺し、ザザムシ、はちの子、イナゴ、蚕のさなぎなど信州らしい肴で一人、乾杯した。いつも街道を歩いたあとのビールのうまさは格別で、その中でとくにうまかったところをこれまで記録してきた。瓶ビールの部第1位は旧東海道の桑名宿、第2位は中山道の沓掛宿そして日本酒第1位は奈良井宿だった。比較するためにビールは瓶と決めてきたが、今回は無性に生ビールが飲みたくなったので方針を変えた。果たして、そのうまさは説明が難しいほどである。旧街道歩きという枠をはずしてもわが生涯で最高のうまいビールだったと云って間違いない。旧街道歩きの生ビールの部おいしさ第1位に、問題なく認定である。
地酒に切り替えて、コシアブラ、シオデ(山のアスパラといわれるそうだ)や、ハリギリなど絶品の山菜テンプラを楽しんだが、さらに何を注文しようかと、メニューを見ていてアッと思った。「根曲・鯖(サバ)缶煮」とあるのである。「根曲」とは「根曲がり竹」のことで、そのおいしさは知られているが、驚いたのは「鯖缶煮」である。みなさまは鯖の缶詰を煮た料理や鯖缶鍋をご存知だろうか。実は、その鯖の缶詰を使った鍋や煮物があることを、つい最近知ったばかりなのである。そして、この店では「鯖煮」ではなく、わざわざ「鯖缶煮」とうたっていることにいささか驚いた。
以前から鯖の缶詰は好物である。念のため付け加えるが、ここでいう鯖の缶詰は、もちろん水煮の缶詰である。この鯖缶、家内からは冷ややかな眼で見られる。最近まで100円ほどで買えたエコな食材だったから非常用備蓄品として揃えるのだといって買ってくるのだが、味の素をひと振りし醤油をかけると酒の肴として最高だから、すぐに在庫がなくなってしまう。今は何倍も値上がりして、近所のスーパーでは500円もしている。家内に評判が悪いのは、鯖が安く出まわている魚なのに、わざわざ缶詰を買うからだろうか。そういえば、昔、アジを釣りに行くとサバばかり釣れて、ご近所に配って迷惑がられたものだ。しかし、今、関サバや三浦半島の松輪のサバなど高級ブランドもある。そもそも、京都では鱧(ハモ)だけでなく鯖も貴重な食材として若狭湾から運ばれたことは有名で、そのルートが鯖街道として知られているのだが・・・。
実は、旧街道歩きをして、旧街道沿道の文化や暮らしのスタイルに地域差があることに興味を持って、これまでも具体例を調べてきた。そして今回の千国街道を歩く前に調べているうちに「鯖の缶詰を使った煮物や鍋料理」を知ったのである。日本経済新聞電子版の「食の方言を探る・食べ物新日本奇行」で見つけた。
その記事は、「あなたは鯖の缶詰を使った煮物や鍋を作りますか?」という質問への、全国の読者のオンラインによる回答を県別に整理したものである。その答えが面白い。「当然!(作る)」と答えた人が多かったのが山形県である。なぜか山形ではポピュラーな料理らしい。「やるでしょ!」と答えて、ときどき鯖缶の煮物や鍋を食べているらしいのが岩手県、新潟県そして長野県、滋賀県だった。そして今回、その長野県の松本で鯖缶煮のメニューを見つけて驚いたのである。もちろん、「根曲・鯖缶煮」をおいしくいただいた。曲がり竹の風味とピッタリである。
「何ですかそれ?」と鯖缶の煮ものや鍋を知らない人が多かったのが、東京、神奈川、埼玉、群馬そして面白いことに、新潟の隣の富山である。この分布をどう解釈するべきなのだろうか。地図とにらめっこである。海に面している県でも、缶詰を使うのは山寄りの地区なのだろうか。そして、鯖の産地である若狭湾の福井県や、鯖街道で運ばれてきた鯖を喜んでいるはずの京都でも、鯖缶煮を知らない人が70~80%というのも面白い。あるいは当然なのか。塩鯖と違って、現代の、しかし無粋な保存術である「缶詰」では京料理には合わないのかもしれない。品位に欠けるということか。フランス料理でも、エスカルゴの水煮の缶詰を使うのだが・・・。
こうして、食の世界の分布を調べたり、その意味するところを考えるのも楽しいことである。鯖缶をつまみに晩酌しながらもっと考えてみよう。
千国街道は鰤(ブリ)街道とも呼ばれ、ブリの文化が根付いているが、どうやら「鯖缶の文化」なるものもあるようだ。
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<参考文献>
・食の方言を探る・食べ物新日本奇行、日本経済新聞電子版〈2006年の地図)
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蓮華岳が間近かである
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木崎湖に向かう道。こんな当たり前の道を、すばらしいと思う
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木崎湖に到着。仁科三湖のもっとも南にある
糸魚川静岡構造線による地溝上に出来た「断層性構造湖」という。
最大水深は29.5m、青木湖から中綱湖を経て来た流れは高瀬川となって安曇野に注ぐ
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三湖の真ん中にある中綱湖簗場の水神社である
この神社もこの一帯も、素朴で、ホッとするような懐かしい雰囲気に包まれている
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仁科三湖で最も北にあり、最大である。水深58mは長野県内で
最深。湖底にかなりの湧水があるらしい。透明度が高くきれいな水である |
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遠くからでも魚影が見える |
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青木湖から森の中を登って佐野坂に向かう。この坂道に石仏が続々と現れる。
「佐野坂西国三十三番観音像」である。文政十二年の高遠の石工により彫られたもので、現在は、白馬村の村宝に指定されているとのこと。
如意輪・千手・千眼・十一面・聖などの観音像である。中には一面十臂の像もある。豪雪地帯ゆえ、道しるべにもなっていたという。静寂な山中を歩いていて木漏れ日に浮かぶ石仏は美しい。安らぎが得られる気がした
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オオナルコユリ
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クルマバソウ
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佐野坂を登ると、糸魚川に流れる姫川水系と高瀬川から千曲川への水系の分水嶺である佐野坂峠である。
西行法師が腰かけたという伝説のある鬼石に腰かけて自撮りした。
誰にも会わない、小鳥と春ゼミの声だけの世界である。 |
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逆コースゆえに、最後に登場したのがこの一番観音像である。
如意輪観音像のようだ |
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十王堂石仏群 ほとんどが馬頭観音のようだ |
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佐野坂峠を越えると現在の白馬村である。ますます野仏が多くなってきた
文字碑や青面金剛の庚申塔と馬頭観音が多いが、一家の安寧を祈願する祈念塔も見られる |
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三猿と一面六臂青面金剛の庚申塔
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美しい山村風景に心が躍る
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だいぶ減ってきたが双体道祖神もある |
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安曇野や残雪の山々風景を期待して松本から歩き始めたが、それだけでなく、この日の仁科三湖とその周辺の森の中の道の美しさにも感動した。森の中でも、集落でも野仏の存在感が大きいことも予想以上であった。やはり、味のある旧街道であることを実感して喜んでいる。千国街道も距離的にはすでに半分を歩き終えたことになるが、これからが激しいアップダウンのある山道となって正念場である。なんとか乗り切って、日本海の幸にありつきたいものである。
ご覧いただき、ありがとうございました。 |
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