礼文・利尻の旅 top pageへ       次のpageへ
  
礼文・利尻の花を訪ねて  (1) 船室の枕とカモメの編隊飛行
  
 
 稚内港出航

 
天候調査中 
  羽田空港のゲートには「天候調査中」の表示、アナウンスでは「旭川か新千歳に降りることもあり得る」と云っている。 かつての経験を思い出しつついろいろなケースを想像するが、心配することはやめにする。 そのときはそのときだ、と。 幸い順調に飛んで稚内に近づくと海上に二つの島が見える。 近くの席のおばさんは、「礼文と利尻だ」とはしゃいでいるが、形が違うでしょ。 「天売島」と「焼尻島」である。 幸い、稚内の町もくっきり見えてきて千歳まで戻ることもなさそう。 と思っていたら、稚内上空を通り過ぎて雲の中へ。 混んでいないのだから一直線に滑走路に降りればよいと思うのだが、大まわりしてまた稚内上空へ。 やっと着陸である。 空港が雲の出やすいところに作られているということだから、天候の状態をチェックしつつ慎重に着陸するために決められたコースなのだろう。 おばさんたちから勘違いの拍手が起きる。
ゆったりコース
 数ある礼文・利尻島観光ツアーの多くは早朝に羽田を飛び立って新千歳空港または旭川空港に降り、延々とバスで稚内に移動して島に渡るそうだ。 バスでは5時間半ほど揺られ、島に到着した頃にはくたくたとなり、さらに翌日は朝6時半に出発して両島を駆け回わるそうである。 しかし我々は、三つの目的を達成する余裕を持つために、羽田から直接稚内空港に飛んで、利尻に一泊、礼文に2泊するゆったりコースを選んだ。 もし「天候不良につき千歳空港に降ります」、なんていうことになったら悲劇だっただろう、なにせ「ゆったりコース」であるがゆえに羽田発も遅い時間だったから。 
ちょっとカニを食べに
数年前に、「ちょっと稚内でカニを食べてこよう」と厳寒期に一泊で行ったことがあるから、稚内は2回目、いや昔を入れれば3回目ということになる。 前回は、利尻富士や礼文島だけでなく、うっすらと、しかもちょっとの時間だけだったが樺太を望むことができて幸運だった。 しかし、カチカチの氷の季節であった。 今回は、緑と花で飾られた地上の楽園の季節である。 窓から見ていると、見覚えのある街も実にカラフルで、緑が広がる大地とともに、やはり氷の季節とは大違いの別世界である。
枕と毛布
 バスやトラックも載せる大型フェリー「プリンス宗谷」は満員である。 3500トン余りで定員は500名だが夏季には632名を積むという。 椅子席も床席も、通路も満員である。  船内の案内放送は、混んでいるので横にならないで、と叫んでいる。 そういえば、船に乗るときはどこでも、昼間の便であっても先を争って横になるスペースを確保することが多い。 昔の青函連絡船もそうだった。 長年の習慣だろうか。 万国共通か、東洋だけか。 今回、我々のグループの船室は一等の和室である。 ここでも、すでに枕と毛布が置いてあって横になるスペースが確保されている。  しかし、利尻島に渡るという心躍る船で船室にこもって寝ころんで行くなとどいうもったいないことはできないわけで、すぐにデッキに飛び出す。 家内も船酔い防止の点から横にならないほうが良いことに気が付いたようだ。 今回の我々のコースは、ゆったりした「グリーンコース」と呼ばれるタイプだそうで、帰りも一等の指定席だそうだ。 ありがたいことだろうが、なんといっても風に吹かれるデッキが一番である。 
カモメの着艦
 
 デッキに出るとすでにカモメが乗船客から上手にえさをもらっている。 数十羽のかもめが編隊飛行のように大きな輪を作って飛ぶ。描く円の向きは、船と平行になるときに船の進行方向に合う方向である。 乗客が差し出すカッパエビセン(?)を上手にくわえる。 取りそこなうとまた輪に戻って一回りしてくることになる。 接近してくると羽の角度を微調整して距離とスピードをコントロールし、顔をちょっと横に向けてえさの位置を確認する。 そういえば、航空母艦に着艦する戦闘機は、このカモメたちと同じことをやっているのだ。 

  カモメたちはいつまでも船に付いてきて帰る様子はない。 良く見ると波間に浮かんで休んでいるのもいる。
 稚内港の歴史的建造物である防波堤が視界から消えたが、まだ利尻島は見えてこない。 思いを込めて島影を探す。
礼文・利尻の旅 top pageへ     このページのtopへ   次のpageへ