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礼文・利尻の花を訪ねて (3) 礼文島の海と丘と花 |
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ゴロタ山から南東方向を望む | ||||||||||||||||||||||||||||
利尻富士とペシ岬をあとにして |
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カラスはフェリーで通勤 | ||||||||||||||||||||||||||||
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いよいよ礼文島である。 利尻島鴛泊港から礼文島香深港まで45分程度である。 見送ってくれる利尻富士は実に均整のとれた、かつ堂々とした姿である。 例によってデッキに出る。 また、カモメが編隊を組んで乗客が伸ばした手から次々にえさをもらっている。 昨日の稚内発のときより数は少ないようだ、と見ると、昨日はいなかったカラスが来ている。 カモメと違って編隊を組んで、上手に輪を書くように飛んで、というわけには行かぬようで、とうとう、マチマチに船の手すりにとまり、床に下りて乗客から直接もらい始めた。 東京近辺のカラスよりも慣れているようだが、強引に袋を狙ったりするような悪さはしない素直な性格のようだ。 すぐ目の前の手すりにとまっているカラスも穏やかにこちらを見ている。 はっと思い出した。 さっき、鴛泊港でこの船への乗船を待つ間、我々の行列のすぐそばににカラスの群れがいたことを。 彼らは餌をねだる風でもなく、あちこちを向いて静かにしていた(上左の写真)。 どうやら今ここにいる彼らはあのカラスたちだったのだ。 この船への乗船を我々同様に待っていたのだ。 行列を作るのは下手だが、おとなしく待っていたのだ。 しかし、カモメは船についてきても疲れたら波に浮いて休みながら帰ることも出来るが、カラスは水に浮くことが出来ない。 だから、早く帰らないと帰れなくなってしまう。 なのに、彼らは慌てる様子がまったくない。 手すりや救命ボートの金具にとまって悠然としている。 デッキで彼らに餌をやっていた人たちが言い出した。 彼らは無賃乗船だ、と。 どうやら、彼らは途中で引き返して利尻島に帰るつもりなどさらさらないようだ。 心配になってきた。 この先、着いた礼文島から、また船で利尻島に帰るのだろうが船便があるだろうか。 船の時刻表を調べてみた。 やはり、今日はもう鴛泊に帰る船はない。 礼文島に一泊して明日帰るのだろうか。 今、カラスたちは子育ての季節のはずだ。 カッパエビセン欲しさに一夜、家を開けるとは情けない話である。 だが、さらに調べてみると、利尻島で鴛泊の反対側にあるもうひとつの港、沓形港への便が30分後にある。 彼らはそれを知っていて、沓形に戻ってから陸伝いに鴛泊に帰るのだろうか。 もしそうなら、大変な利口者である。 しかし、ちょっと待てよ、彼らは本当に利尻島のカラスなのだろうか? ひょっとすると、実は礼文島のカラスで、今、利尻島から帰宅の途中ではないのか? などと、楽しませてもらっているうちに、懐かしい礼文島がもう目の前にある。 |
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このページのtopへ 花の浮島にはモーツアルト |
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香深港からのバスが走り始めるとあっという間に花が咲き乱れる丘に入った。 ここでバスを止めてくれー、と言いたくなる景色である。 しかし、無常にもどんどん走ってしまう。 実はこのあと、そして翌日にもたっぷりとこの辺の草原を歩くことになるのだが。 | ||||||||||||||||||||||||||||
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この礼文島でどこにでも咲いている目立つ花はピンク色のレブンシオガマ(ヨツバシオガマ)であるし、宮本さんの強いお勧めは、意外にもレブンウスユキソウでもレブンアツモリソウでもなく、あふれんばかりに群生しているエゾカンゾウである。いたるところに咲いているし、特に崖に連なる草原や霧に霞む谷あいのエゾカンゾウの群れは見事である。 ところどころに紅色に目立つきれいな花がある。コウリンタンポポという帰化植物だそうだ。 サラダなどの食用に札幌の先生が植えたのが始まりで北海道中に広がってしまったのだそうだ。 観光客には好評だが、実は在来種への影響で困っているという。 駆除をしているが成果が上がらないそうだ。 今回見た礼文島の殆どの山は草原の丘という印象であるが、もともとは深い森に覆われていた部分の多かった時代があったという。 船泊付近の山を見ながら聞いた話であるが、いつの時代であったか昔々、大火があり、谷あいの樹木以外は燃えつきてしまったそうだ。 以後、植林をしても殆ど根付かないという。 現在でも植林の努力が続けられているがなかなか成功せず、植生の復旧に途方もない単位の年月がかかるという。 自然が壊れる、または変化する原因はいろいろあろうが、復旧させるためには大変なエネルギーと時間がかかることを実感する。 そういえば、尾瀬では入山するときに登山客は靴を洗浄することを求められると聞く。 また、伊豆大島に行ったときに知ったのだが、島外の車が入ることを嫌ってフェリーが今でも運行されていない。 植生の維持のためだけではないだろうが、住民の総意であると聞いた。 | ||||||||||||||||||||||||||||
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今回見た膨大な数の花の中で、結果的には、レブンウスユキソウが最も印象的であった。 普段あまり行かないところに行きましょうとの宮本さんの案内で登った群生地には、ガンコウランの見事な絨毯のなかに露に濡れて輝いていた姿は素晴らしかった。 アルプスのエーデルワイスだけでなく、今は植物園などでウスユキソウを見ることは決して難しくないが、自然のなかで毅然と咲く姿は感動的であった。霧に煙っていたこともその理由のひとつかもしれない。 なお、引き立て役のガンコウランを見たとき、苔だと思ったがそうではなく、なんと低木だそうである。 もちろん花々は実に見事であるが、心を打つのは人の生活がかかわる風景である。 低い丘が連なる独特の海岸の景色は海性段丘と分類されるそうだが、その丘と海岸の間にある建物には、冬場の厳しい環境を想像させたり、昔の記憶を呼び起こさせるような懐かしさを感じさせるものが多い。 3日目にスコトン岬を経て、鮑古丹からゴロタ山を歩いたとき、山や丘の稜線の美しさと、咲き乱れるお花畑と海がつながっている感のある見事な光景に息を呑んだが、その景色には、番屋ではないかと思われる建物が重要な位置を占めている。 その鮑古丹の海岸に降りると、その建物のごく質素なつくりの赤や青のトタンぶき屋根がこうした光景では不思議に調和しているような、安心感を与えてくれるような、それでいてまるで異なる次元へのゲートのような新鮮さを与えてくれる。 鮑古丹を象徴しているこの建物のすぐそばにはハマベンケイソウが宝石のように輝いていた。 ハマハコベと並べて寄せ植えしたかのような見事なコントラストを描いている。 |
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鮑古丹 | ||||||||||||||||||||||||||||
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気候が厳しい、と再三書いたが、礼文島は地球儀を見ると緯度的にはミラノあたりに相当する。 北の果てに来たつもりの我々からするとややがっかりする。 ロンドンやパリはもっと北にあって、この辺で言えば樺太(サハリン)の中部に相当する。 また、礼文の気候は、これまでの最高温度が23℃だそうで、その点はさすがと思うのだが、意外なのは冬の寒さである。 零下数十度を想像するが、これまでの最低気温はなんとマイナス9℃だという。本当?、聞き間違いでは、とも思うのだが本当らしい。 もう一度確認しておく必要はあるが。 では、なぜ低地でも高山植物、寒地植物が沢山あるのか。 冬の西風が強いことが、植生的には平地でも本州の1000m級に相当し、最高の礼文岳でも490mという低い山ばかりだが、ちょっと山に登ればたちまち2000m級の高山植物地帯になる理由という。 寒地植物には風が必要なのだそうだ。 氷河期が後退していったとき、植物は暖地系のものにどんどん取って替わられたが、本州で言えば高い山に、礼文島などでは風の強いところに寒地系の植物が取り残された、ということらしい。 6月の平均気温は13℃、今日は15℃である。 思ったほど北に位置していないのだが、もちろん日本では最も北にあるわけで、夏至には日本で最も日が長く、冬至には最も日が短いということになる。 夏至の日の出は3時40分で沖縄より1時間40分早いそうである。 日没は19時26分だそうだ。 桃岩展望台付近の丘の一面の花々は取り残された花たちなのだ。 鮑古丹を見下ろしたときの光景、そしてそこからゴロタ山への山道では、風によって雪が吹き飛ばされる西側の寒地植物と、雪が笹を守るという東側の植生のせめぎ合いの境界線が印象的であった。 花にあふれたこの島の山の道、丘の道を歩くと、これはもうモーツアルトの世界である。 ピアノコンチェルト21番第2楽章か ディベルティメントK136か。 3日目の午後は3時間の林道コースである。 香深井からの始めの半分は森の中の道である。 ウルシに気をつけるよう再三注意を受けながら、森の香りを楽む。 森を抜けるとレブンウスユキソウの群生地、エゾカンソウの群生地と続き、天国の散歩道である。 |
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柱状節理の崖 |
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水が大変きれいで青く光っている澄海岬には柱状節理の岸壁が見られるが、特に、右側のものは横方向に並ぶ横臥柱状節理である。 なお、写真では分からないが、2日目に見た桃岩は珍しい放射状節理とのことである。 |
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