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地球深部探査船 「ちきゅう」
見学記
天の果て、地の底への基地を訪ねる
2005年の夏の記録



海底下7,500mを掘ってマントルに穴を開けて、地球のナゾに迫る、というとてつもない船を見学しました。
巨大地震の震源まで掘って直接観察したり、

最初の生命は原始地球の高温・高圧・無酸素状態で誕生したというナゾを追って、
今も似た環境に迫るというのです。

豪華客船なみの5万7千総トンという大型船で、日本中のどの橋の下もくぐることができないという船です。
2005年9月12日



前線の通過でしょうか。浦賀水道を低い雲が襲ってきました。 
横須賀中央駅から横須賀新港に向かって歩いてゆくと、普段なら見えないはずの位置から巨大な船が見えてきました。
7月に完成した地球深部探索船「ちきゅう」です。 横浜と、母港となる横須賀で公開されました。
独立行政法人海洋研究開発機構 地球深部探査センターの船です。
その巨大さに、まず度肝を抜かれました。
          総トン数 57,087 トン
          全長210m、
          幅38m、
          高さは底から130m、海面から121m
ということで、海底掘削船として世界最大です。
 
ブリッジ前に張り出しているのはヘリデッキです。半年から1年以上も同じ場所にとどまって掘り続けるために、燃料や食料は補給を受けるということです。GPSと、360度回転できるプロペラ6個などを使って、どんな天候や海面状態でも位置を保持できるというから驚きです。

船は、掘削だけでなく、動く研究所であり、変化しやすい採取サンプルを直ちに分析できるよう、各種の処理設備、分析設備を積んでいます。国際研究チームが、生活の場を共にしつつ、議論と研究作業ができるのは理想的でしょう。
乗組員100名、研究者50名が定員です。 覗いてみたら、居室はバストイレつきの個室でした。
何といっても、この掘削やぐら(デリック)が巨大です。ドリルパイプをつないで降ろし、その中をドリルピットを通して掘削し、採取サンプルを取り出します。 マントルまで掘るときのパイプは、なんと1万1千mの長さになるということです。下の写真は、この船の上部甲板から写したのですが、広角レンズでもとても納めきれないので、カメラを縦に構えて上下に2枚撮影し、上下のパノラマとして合成したものです。これでは、鳴門大橋もレインボーブリッジやベイブリッジも通れません。ドック入りできる造船所は限られるのでしょう。
突然ガスが噴出したときなど、蓋をする設備も大がかりなものでした。
帰りに、「地球の内部で何が起こっているのか?」という光文社新書を買いました(平朝彦、徐垣、末廣潔、木下肇共著。2005年7月20日)。 まさに「目からウロコ」の思いでした。 この「ちきゅう」は世界をリードする形で日本がつくったのですが、先輩であるアメリカの掘削船、「グローマー・チャレンジャー」や「ジョイデス・レゾリューション」と国際的な研究チームは、いまや常識となったプレートテクトニクス説の実証をはじめとして、地震発生のメカニズムや、ハイドロメタン関連の発見など、その功績は地球の真理探究に巨大な貢献をしたようです。
ハイドロメタンが次世代エネルギーとして注目されるものの、うっかりすると地球を破滅に追い込む危険があることも分かります。 

穴を掘って、ホットスポットからのマグマ噴出とその後の海洋底移動によるハワイ列島生成の証明をしたり、恐竜絶滅原因が天体衝突であることを証明したり、と大変興味深いサイエンスです。
我々は、「地球にやさしい」とか、「持続型社会」などと格好よくいいますが、真に地球の歴史や人間生活の影響を理解することなしに、その場しのぎで云ってきたようで、反省させられます。

この「ちきゅう」は、これまでの掘削船に比べて飛躍的に大きくて高性能であるため、世界的に絶賛された計画であり、期待も非常に大きいようです。掘削活動は国際的に組み立てられた計画の一環として位置づけられており、船上にはすでに、多くの外国人研究者の姿を見ました。 来年2006年度から本格的に活動に入るとのことで、成果がとても楽しみです。
大変感動して、帰路に着きました。 
幸い、雨はぱらついただけで空が明るくなりました。
この「ちきゅう」のWEBページ
http://www.jamstec.go.jp/chikyu/jp/index.html
今、どこで何をしているかが分かります.
地球内部で起きていることの説明もあります

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