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コーヒー ケーキ
 ウイーンで、ザッハートルテを味わうことにしたとき、コーヒーをどのように注文するかちょっと惑った。 家内は「ウィンナコーヒー」ではなく、「普通のコーヒー」が飲みたい、というのである。 エスプレッソもダメだという。 そこで、「ツー カフィー プリーズ。 ワン イズ モカ 」(これは自分用で、メニューにあったから問題ない)。 次が問題。 「アナザーワン イズ ノーマルカフィ ウイズアウト クリーム」 。 なにしろ、メニューには、アインシュペナー(これが、我々がいう、いわゆるウィンナコーヒーで、大きな店ならば「ウィンナコーヒー」といっても通ずるらしい) や、エスプレッソ、モカはあるが、いわゆるブレンドコーヒーらしきものが見当たらない。 そこで苦しまぎれにこう言ってみたのだが、通じたようだ。 後で調べると、エスプレッソを薄くしたフェアレンゲアターというのが、ブレンドに近い味らしい。
 かつて、北ドイツ方面に、仕事で行ったとき、ツェレという、見事な木造の古い街並みの中の店で、トルココーヒーなるものを飲んだことがある。 小さなカップで出てきたコーヒーは、上にえらく苦くて濃厚な液体が少しだけ載っているが、それを飲んでしまうと、あとの大部分は、逆さにしても出てこないような塊であった。 何て不思議なコーヒーだろう、と思ったが、今回の旅の仲間から聞いたところによると、どうやら飲みかたを間違えたらしい。 聞いたはずの正解を忘れてしまったが。 コーヒー通には笑われそうだが、コーヒーはごく当たり前のが良い。
 
 甘み大好きである。 虎ノ門界隈で痛飲した後、あんみつを食べに行こう、と誘い合うことも少なくなかった。 いわゆる両刀使いである。 今も、食事の後の甘みは欠かせない。 漬物と味噌汁で育ったこともあり、最近の、何でもやたらと甘みを抑え、塩味も控えめにしてしまう日本の味が我慢ならないこのごろである。 頑固に、甘みをしっかり練りこんだ菓子に出会うととてもうれしいし、「超」辛口の塩鮭は、めったに出会わないが、これほどうまいものはない、と感激する。
 しかし、ザッハートルテの甘さと大きさに驚いた、と今回のウィーンのページに書いたが、ウイーンでもチェコでも、菓子の味は、きわめて濃厚であった。 昔、アメリカ出張でピッツバーグ郊外に1ヶ月近く滞在することを何回か繰り返したことがあった。 毎日、昼食は、いろいろなレストランに行ってご馳走されるのだが、その際のデザートのボリュームと甘さには驚いたものだった。 彼らの体力の源泉を見た思いだった。 何とかベリーの何とかパイ、だとか、ときには家族でやっている小さな店で、ホームメードの何とかジョリー(ジェリー)だとか、まるで山のように盛られて出てきた。 今回、デザートとして味わった、あるいはただ眺めただけのことも多かったが、ベリー類など果物をたっぷり載せて、どぎついほどに濃厚な色のケーキが、色も味も、そのころのアメリカの田舎で味わったものに似ているような気がした。 フランスのケーキは、さすがに、上品であるように思うのだが、どうだろう。 基本的には、日本のケーキはフランス風だろう。
  翌日まで尾を引きそうな、「甘いものうんざり症候群」を招くほど、こちらのお菓子は甘かったのである。
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